カラーマネージメント(その1)  

 今までエプソンのPM-880Cを使用していました。このプリンターは99年12月にある家電量販店でデモをしているのを見て,簡単に家で写真並の印刷が出来るのが判り衝動買いしました。今年で4年が経過しましたが,モニターの色とプリンターの色が合わずに苦労してきました。(どちらか言えば諦めて)また,最近印刷面の裏側に多量の黒い汚れが付くようになってきました。ぼちぼち寿命かと考え新しいプリンターを購入しました。
 昨年末よりプリンター選びを検討して,年明けで価格が下がったのを機に2005年1月17日に購入しました。選択肢はキヤノンのPIXUS iP8600とエプソンのPX-G920でした。色彩的にはキヤノンの方が素人好みの艶やかさがあり,エプソンはおとなしい感じで,人物撮影では顔色がやや土色になります。(これはG920のインクが顔料のためで,同じエプソンでも染料系のインクではキヤノンとあまり変わりません。)風景写真の場合にはG920の方が自然な感じが出ているので悩むところでした。
 PX-G920を購入し,色々プリントしていると,やはりモニタの色とは合いません。そこで,基本に戻ってカラーマネージメントを考えてみました。

1.カラーマネージメントとは
 モニターとプリンター等異なるデバイスからの出力においても,同じ色が表現されるようにすることである。即ち,モニターで見た色をプリンターで表現することであり,これを実現するシステムを「カラーマネージメントシステム」と呼ばれている。
★カラーマネージメントシステム
 モニターはそれ自体が発光して色を表現するデバイスですが(加色混合),プリンタは紙に顔料を載せ,その紙に当たった光の反射で色を表現するデバイスです(減色混合)。このようにモニターとプリンタでは,色の表現方法がまったく異なっているため編集時にモニターで指定された色どおりにプリンタから印刷するのは容易ではない。一般にカラーマネージメントシステムでは,デバイスごとの特性が記録されたデバイスプロファイルを用意し,これに従ってカラースペースを変換することでデバイス間での色の整合性を図るようにしている。
 この問題を解決するために,それぞれ異なるデバイスのカラーを一旦デバイスに依存しないLab値で表現する共通のカラースペースに変換し,次に他のデバイスのカラースペースに変換する事で,異なるデバイス間でも一貫したカラーを扱えるようなカラーマネージメントシステムが標準的に使われています。
 (Lab:明度(L)、色相(a_b座標)、彩度(中心からの距離)で色を表す方法です。)

 このカラーマネージメントシステムは,Windowsでは「ICM」という機能名称でOSに内蔵されています。また,Adobe Photoshopに内蔵されているACE(Adobe Color Engine)の様に,アプリケーションソフトウエア自身が独自のカラーマネージメントシステムを内蔵している場合もあります。

・加色混合
 原色を加えていくことで,さまざまな色を表現する方式であり,加法混色と呼ばれる。加色混合の代表例はモニター(ディスプレイ)で,ディスプレイでは,赤(Red),緑(Green),青(Blue)に対応する電子銃をディスプレイ表面の蛍光面に照射し,それ自体が発光して色を混ぜ合わせることで,さまざまな色を表現するようになっている。
・減色混合
印刷物のように,それ自体が発光するのではなく,当たった光の反射光で色を表現する場合の色の表現方式で減法混色と呼ばれる。
 印刷物では,藍(シアン(Cyan)),赤紫(マゼンタ(Magenta)),黄(Yellow)の3色(インキの3原色)の顔料を適当な比率で混ぜ合わせることで,さまざまな色を表現する(各色の頭文字をとって,CMYK方式と呼ばれることもある)。この際たとえば,シアンとマゼンタを混ぜると青に,すべてを混ぜ合わせると黒になる。白色光は光の3原色をすべて含んでいるため,白色光を当てたときにシアンに見えるということは,光の3原色のうちシアンを構成する成分だけが反射されるということになる(青+緑の光でシアンに見える)。これは逆に言えば,シアンのインクは,それ以外の色の成分を吸収しているということである。この際の成分の吸収率は,顔料の濃度が高いほど大きい。CMY方式による色表現が減色混合と呼ばれるのはこのためである。

2.ICC(International Color Consortium)プロファイル
 カラーマネージメントシステムでは,ICCプロファイルが大きな役割を果たします。ICCプロファイルはそれぞれのデバイス用に固有に有り,各デバイスの特性が記述され,各デバイスと共通のカラースペース間の変換テーブルです。つまり,ICCプロファイルは各デバイス特性と共通のカラースペース間の補正を行うために使用されます。
  ICCプロファイルは,モニタやプリンタなどのハードウエアデバイス用だけでなく,画像データの持つカラースペースや,出力するインクジェット用紙毎のプロファイルもあります。これらのICCプロファイルをカラーマネージメントシステムで正しく利用する事で,データが持っている色彩を各デバイスが表現できる色再現領域内で最大限引き出す事が可能なのです。
 現在のカラーマネージメントは
 CANON20DのRAW画像で撮影Adobe Photoshop CS2でRAW画像を現像し,カラースペースはsRGBにてjpeg画像に変換保管(ICCプロファイルはsRGB IEC62966-2.1)
 Adobe Photoshop CS2で画像読み込み画像のICCプロファイルを利用して共通のカラースペースとなるLab値に変換モニタ画面の表示には,共通のカラースペースに変換された撮影画像のLab値をモニタのICCプロファイルを利用してモニタの特性に合わせたRGB値に変換して表示プリンタで印刷する場合には,共通のカラースペースに変換された撮影画像のLab値をプリンタのICCプロファイルを利用してプリンタドライバの特性に合わせたCMYK値に変換して印刷
  こうすれば,撮影画像本来の色とモニタ画面の色,印刷した色が非常に近い色になるはずです。

3.カラーマネージメントとプリンタでの印刷 
 印刷方法を大別すると,[プリンタドライバ独自の色処理],[ICM/ColorSyncカラーマネージメント],[アプリケーションカラーマネージメント]の3つの流れがあります。
(1)プリンタドライバ独自の色処理
 もっとも一般的に利用される通常の印刷方法で,カラーマネージメント機能は利用していませんが,エプソン独自のドライバ色処理技術で印刷します。印刷方法としては「EPSON Easy Photo Print」,「EPSON Pro Lab Print」等のソフトが用意されており,簡単に印刷することが出来ますが,モニターの色と完全に合わすことは出来ません。
(2)ICM/ColorSyncカラーマネージメント 
 WindowsのICMのカラーマネージメントモジュール(CMM)が,Source(入力)側に印刷画像のICCプロファイルを,Destination(出力)側にプリンタのICCプロファイルを利用してカラーマネージメントを行います。こうして印刷画像のRGBをプリンタで再現するCMYKに変換するのです。また,OSのカラーマネージメント機能を利用しているため,モニターと印刷の色を近づけることができます。
(3)アプリケーションカラーマネージメント
 Adobe Photoshop等アプリケーションソフト内蔵のカラーマネージメントモジュールが,[ソースカラースペース](入力)側に印刷画像のICCプロファイルを利用して,[プリントカラースペース](出力)側に純正インクジェット用紙のICCプロファイルを利用する印刷方法です。Adobe Photoshopで印刷する場合は,Photoshopのカラーマネージメント設定で,[ソースカラースペース]に[ファイル](印刷画像のICCプロファイル)を選択し,[プリントカラースペース]に純正インクジェット用紙のICCプロファイルを選択します。この方法で印刷する場合も,各純正インクジェット用紙に最適なインクの吐出量を指定するためユーザがプリンタドライバで[用紙の種類]や[印刷品質]を設定しなければなりません。注意しなければならない事は,アプリケーションカラーマネージメントを利用する時は,プリンタドライバでは色処理を行わない設定にすることです。プリンタドライバの[マッチング方法]を[しない]以外を選んだり,ICMやColorSyncも利用するようなプリンタドライバ設定をしてしまうと再度これらの色処理が加わるため印刷した色がおかしくなってしまいます。